先般、ペーパークラフトの「
七重塔」を制作するために伊豆国分寺を見学してきましたが、その帰りに立ち寄った三島暦師の館で「携帯日時計」という珍しい商品を発見しました↓。私も
富士山腕時計という日時計を作っていますので、それに応用できる新しい何かが発見出来るのではないかと期待して、早速その商品を購入し、仕組みを調べてみることにしました。
まず、商品の使用説明に書かれていた「ノーモン」なる言葉の意味がわかりませんでした。調べたところ「ノーモン」とは天文教育の入門として使われる基本的な道具で、道具といっても水平な地面に垂直に立てた棒のことですが、日時計の針に相当します。ノーモンの作る太陽の影が、午前と午後に同じ長さになった時に投影面を記録すれば、その2点を結ぶ線が東西を示し、その垂直線は南北の方位を示します。
この「携帯日時計」がどのようにして作られたのか?実際に富士宮版「携帯日時計」を作る作業を通して原理を学ぼうと思いました。富士宮版「携帯日時計」を作るプロセスには2つの方法が考えられます。
(1)実際にノーモンを庭先に立てて1年間記録し、その記録データを「携帯日時計」に合うように縮小する。
(2)先人たちが導いた太陽の軌道計算式を使ってノーモンの影の長さを導く。
本来、科学とは(1)のような作業を通して理解を深めるものですが、私がいくら暇とはいえ、(1)は時間がかかり過ぎるのでやめました。(2)の方法でJR身延線の富士宮駅(緯度35.221°、経度138.615°)における「携帯日時計」を作ることにしました。その結果がコレです↓午前と午後の時刻線(特に正午付近)が重なり合って判断しにくい場所があり、商品としては問題が有り過ぎです。また三島暦師の館の「携帯日時計」からのパクリ感が拭えないので商品化は考えられません。
この画像↓をコピペ&A4用紙に印刷して組み立てれば完成です。(業務使用の場合は許可が必要です。)
時刻線の作り方を知りたい方はエクセルファイルを公開しますので解析してみてください。→→→
sundaial.xls この表計算のパラメータは緯度、経度、ノーモンの高さの3つです。パラメータを変えて表をグラフ化すればお望みの場所における「携帯日時計」の時刻線が簡単にできます。マクロは使用していませんのでご安心ください。
太陽の軌道を考えていた時、富士山を高さが3776mのノーモンとして見れば、ダイヤモンド富士の見える日時が計算できることに気が付きました。f(x)の逆関数を利用するだけなので頭の中は簡単に整理ができます。その時パラメータとして必要な情報は観測場所の緯度、経度、富士山頂までの水平距離、緯度線に対する富士山頂の角度の4項目です。ダイヤモンド富士の見える日時を調べる方法は、既にカシミール3Dや他に同様なサイトが多数ありますが、この
sundaial.xls が理解できれば、より簡単に任意の場所におけるダイヤモンド富士が現れる日時を知ることができます。
田貫湖のダイヤモンド富士↓は
富士山をノーモンとして見れば、このようになります。
富士山腕時計という点と「携帯日時計」という点は、残念ながら結ばれることはありませんでしたが、
sundaial.xlsでもっと面白い事ができそうです。
text by shibakin